2017年の開幕戦(4月1日・2日)ツインリンクもてぎ。ミッドレスのエースナンバーであるカーナンバー38は、ゼッケンベースの帯が前年までの赤から白に変わっていた。それは86/BRZレースプロフェッショナルシリーズから、クラブマンシリーズへのクラス替えを意味していた。
「その代わりにフル参戦してクラブマンシリーズのチャンピオンを獲れ、と。まぁ、そう簡単ではないと思いますけど…」。ドライバーである神谷裕幸選手は、いつものように少し照れたような笑顔で、そう答えた。
日本のトップクラスのプロドライバーが居並ぶプロフェッショナルシリーズは、確かに上位入賞が難しい。アマチュアでありミッドレス社員の神谷選手がプロフェッショナルシリーズを4年間戦って残した成績は、2014年の最終戦での9位入賞が最上位。それが唯一のトップ10だった。
ヴィッツレースからのステップアップ組のひとりである神谷選手は、トヨタのワンメイクレースシリーズで速さもテクニックも備える実力派として知られていた。それでもプロドライバーの中では苦闘し、激しいバトルが展開される中盤グループで戦ってきた。
しかし、だからといってクラブマンシリーズで簡単にチャンピオンが取れるわけではない。ヴィッツレースで優勝を争ってきたライバル達が、すでに何人もクラブマンシリーズを戦っている。彼らは使用するタイヤに対するデータやノウハウも、ずいぶんと蓄積しているはずだ。しかも神谷選手は86/BRZレースにフル参戦したシーズンが一度もなく、走行経験していないサーキットさえ存在していた。
ただ、マシンが後期モデルへとチェンジした2017年シーズンは、起死回生のための絶好のチャンスに違いなかった。
開幕戦は3番グリッドを獲得、持ち前の速さを見せたものの、決勝レースでは惜しくも2位となった。期待通りの上々のシーズンインではあったが、2014年以来3年ぶりのツインリンクもてぎ、低温下でのタイヤのデータなど、神谷選手にはいくつか不足していた。
立ちはだかったのは、ヴィッツレースでもライバルだった小野田貴俊選手。彼は3シーズン目の86/BRZレースクラブマンシリーズであり、過去2シーズンともにチャンピオン争いを繰り広げてきた。第2戦(5月7日)でも、またトップを走る小野田選手の後ろでレースをすることになり、結果は3位。今シーズンはこの2人の争いになることを予感させた。
しかし、続く第3戦(6月3日・4日)富士、3番グリッドからスタートした神谷選手は、思わぬマシントラブル見舞われ、何とかゴールまで運ぶのが精一杯で9位に終わる。小野田選手が予選でミスし決勝もノーポイントだっただけに、大量得点でランキングを逆転するチャンスでもあった。
だが、第4戦(7月1日・2日)。ホームコースである岡山で神谷選手はポールポジションを獲得、そのまま初優勝を果たす。しかもファステストラップも記録した、完全勝利だった。会心のレースでフルポイントを加算し、シリーズランキングでもトップに躍り出た。開幕戦からの速さを、しっかりと結果に結びつけたこのレースから、シリーズの流れが大きく変わっていった。
2連戦の十勝(7月28日~30日)は、初めてのコースだったが優勝&3位となり、さらに第7戦富士(9月1日・2日)でもポール・トゥ・ウィンを勝ち取った。ついにシリーズチャンピオンへ王手をかけた。全10戦で行われた2017シーズン、クラブマンシリーズはポイント上位5戦が有効ポイントとなる。
優勝3回、2位1回を記録していて、あと1勝すればチャンピオンが確定する。圧倒的な速さと、絶対的な安定感を見せていた神谷選手が、次戦で表彰台の頂点でチャンピオン獲得を喜ぶ姿を見せてくれるはずだった。
第8戦(9月30日・10月1日)もまた初めてのスポーツランドSUGOだったが、見事にポールポジションを獲得。しかし決勝は途中までリードしていたものの、フライングスタート判定されドライブスルーのペナルティ。10位ゴールとなった。
「ちょっと動いちゃいましたね(苦笑)。だけど鈴鹿で決めたいと思っていたので、これで良かったということにしてください」と、神谷選手が明るかったのは、チャンピオン争いのライバル小野田選手が6位に終わり、残り2戦を2連勝しなければ神谷選手の有効ポイントを超えられなくなったからだ。チャンピオンがまた一歩近づいていたことは間違いなかった。
第9戦(10月21日・22日)は、ミッドレスの地元ともいえる鈴鹿サーキット。神谷選手にとっても走り慣れたコースだ。台風接近の大雨の中で行われた予選は不調で、7番グリッドからのスタートに。
しかし台風の影響から、土曜日の夕方、レースは中止と発表された。その瞬間、神谷選手のシリーズチャンピオンが決定した。
雨が降りしきる薄暗くなったパドックは、慌ただしく撤収作業が行われていた。ただミッドレスのテントだけは、華やいだ空気に包まれていた。「本当に(チャンピオン決定で)いいんですよね?」いつも控え目な神谷選手らしい、チャンピオン決定後、最初のコメントだった。
「レースが中止になって、チャンピオンが決まるとは思っていませんでした。やっぱり小野田さんに勝って、チャンピオン決めたかったですね」。
その思いは、最終戦(12月8日・9日)で実現する。ポールポジションこそ獲得できなかったものの、逆転で優勝。4勝目を挙げて、2017シーズンを締めくくったのだ。
Pos. | Driver | Car name | Lap | Total time | Gap |
---|---|---|---|---|---|
優勝 | 小野田貴俊 | ネッツ東埼玉ワコーズED86 | 10 | 23'40.778 | - |
2位 | 神谷裕幸 | N中部ミッドレススノコ86 | 10 | 23'41.428 | 0.65 |
3位 | 橋本洋平 | カーウォッチBS86REVO | 10 | 23'42.250 | 1.472 |
4位 | 菱井將文 | CUSCO BS 86 | 10 | 23'43.822 | 1.572 |
5位 | 古田岬 | R-SPEC柿崎ルブテック | 10 | 23’49.359 | 5.537 |
Pos. | Driver | Car name | Lap | Total time | Gap |
---|---|---|---|---|---|
優勝 | 菱井將文 | CUSCO BS 86 | 10 | 22’45.462 | - |
2位 | 小野田貴俊 | ネッツ東埼玉ワコーズED86 | 10 | 22’46.615 | 1.153 |
3位 | 神谷裕幸 | N中部ミッドレススノコ86 | 10 | 22’47.073 | 1.611 |
4位 | 橋本洋平 | カーウォッチBS86REVO | 10 | 22’47.677 | 2.215 |
5位 | 長島大輝 | 埼玉自動車大学校ED生駒86 | 10 | 22’50.601 | 5.139 |
Pos. | Driver | Car name | Lap | Total time | Gap |
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優勝 | 庄司雄磨 | OTG AREA 86 | 10 | 21’19.579 | - |
2位 | 橋本洋平 | カーウォッチBS86REVO | 10 | 21’20.434 | 0.855 |
3位 | 菱井將文 | CUSCO BS 86 | 10 | 21’21.714 | 2.135 |
4位 | 松井宏太 | ネッツ青森アップルRC86 | 10 | 21’28.085 | 8.506 |
5位 | 大久保仁 | Forceネッツ東埼玉86 | 10 | 21’28.890 | 9.311 |
9位 | 神谷裕幸 | N中部ミッドレススノコ86 | 10 | 21’32.411 | 16.452 |
Pos. | Driver | Car name | Lap | Total time | Gap |
---|---|---|---|---|---|
優勝 | 神谷裕幸 | N中部ミッドレススノコ86 | 12 | 27’01.240 | - |
2位 | 菱井將文 | CUSCO BS 86 | 12 | 27’02.879 | 1.639 |
3位 | 橋本洋平 | カーウォッチBS86REVO | 12 | 27’13.196 | 11.956 |
4位 | 小野田貴俊 | ネッツ東埼玉ワコーズED86 | 12 | 27’14.756 | 13.516 |
5位 | 花里祐弥 | 埼玉トヨタ・エンドレスYH86 | 12 | 27’15.269 | 14.029 |
Pos. | Driver | Car name | Lap | Total time | Gap |
---|---|---|---|---|---|
優勝 | 神谷裕幸 | N中部ミッドレススノコ86 | 10 | 16’33.598 | - |
2位 | 小野田貴俊 | ネッツ東埼玉ワコーズED86 | 10 | 16’35.179 | 1.581 |
3位 | 菱井將文 | CUSCO BS 86 | 10 | 16’40.633 | 7.035 |
4位 | 松井宏太 | ネッツ青森アップルRC86 | 10 | 16’44.835 | 11.237 |
5位 | 伊藤俊哉 | サミット&ミッドランド 86 | 10 | 16’53.195 | 19.597 |
Pos. | Driver | Car name | Lap | Total time | Gap |
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優勝 | 手塚祐弥 | 栃木スバルBSBRZ P.MU | 14 | 23’07.431 | - |
2位 | 菱井將文 | CUSCO BS 86 | 14 | 23’10.958 | 3.527 |
3位 | 神谷裕幸 | N中部ミッドレススノコ86 | 14 | 23’11.554 | 4.123 |
4位 | 小野田貴俊 | ネッツ東埼玉ワコーズED86 | 14 | 23’16.874 | 9.443 |
5位 | 松井宏太 | ネッツ青森アップルRC86 | 14 | 23’26.000 | 18.569 |
Pos. | Driver | Car name | Lap | Total time | Gap |
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優勝 | 神谷裕幸 | N中部ミッドレススノコ86 | 10 | 21’23.171 | - |
2位 | 小野田貴俊 | ネッツ東埼玉ワコーズED86 | 10 | 21’23.759 | 0.588 |
3位 | 松井宏太 | ネッツ青森アップルRC86 | 10 | 21’26.127 | 2.956 |
4位 | 花里祐弥 | 埼玉トヨタ・エンドレスYH86 | 10 | 21’36.219 | 13.048 |
5位 | 水野大 | リキモリ剛式制動屋カークリ86 | 10 | 21’37.234 | 14.063 |
Pos. | Driver | Car name | Lap | Total time | Gap |
---|---|---|---|---|---|
優勝 | 橋本洋平 | カーウォッチBS86REVO | 13 | 25’38.318 | - |
2位 | 長島大輝 | 埼玉自動車大学校生駒ED86 | 13 | 25’40.986 | 2.668 |
3位 | 松井宏太 | ネッツ青森アップルRC86 | 13 | 25’42.931 | 4.613 |
4位 | 高橋泰裕 | Green Brave 86 | 13 | 25’44.899 | 6.581 |
5位 | 小野田貴俊 | ネッツ東埼玉ワコーズED86 | 13 | 25’47.251 | 8.933 |
10位 | 神谷裕幸 | N中部ミッドレススノコ86 | 13 | 26’01.518 | 23.200 |
Pos. | Driver | Car name | Lap | Total time | Gap |
---|---|---|---|---|---|
優勝 | 神谷裕幸 | N中部ミッドレススノコ86 | 10 | 21’00.295 | - |
2位 | 松原亮二 | N群馬ジースパイスFK86 | 10 | 21’00.694 | 0.389 |
3位 | 小野田貴俊 | ネッツ東埼玉ワコーズED86 | 10 | 21’11.450 | 11.155 |
4位 | 水野大 | リキモリ剛式制動屋カークリ86 | 10 | 21’11.750 | 11.455 |
5位 | 長島大輝 | 埼玉自動車大学校生駒ED86 | 10 | 21’19.674 | 19.379 |